2016年夏、私たち凸版印刷の帝国ホテル・ライト館VR再現プロジェクトチームは、明治村(愛知県犬山市)にある帝国ホテル中央玄関の上空に飛ばしたドローンを眺めながら、「古代遺跡の雰囲気も漂う格好いい建物だなぁ」「日比谷にあった頃はどんな姿だったのだろうか」と思いを巡らせていました。そして、写真や模型だけでは伝わらない、完全なライト館の追体験ができるようにしたいという思いを強くし、これまでVR再現に取り組んできました。
まずは明治村に移築再建された中央玄関、次にその奥にあった食堂の再現、外観の再現…を行い、これからいよいよ最も豪華な宴会場(ピーコックルーム)や客室などの再現に取り掛かろうとしています。
帝国ホテル・ライト館が解体されたのは今からちょうど50年前、1968(昭和43)年です。解体前、例えば1965年頃に20代でライト館を経験した方は、現在70~80歳のお年を迎えられています。先日、ある方にVRを御覧いただいたところ、「10代の頃に家族で食事に行った事を鮮明に思い出したよ」という感想をいただきました。
また、私たちが建築考証で御世話になることが多い、東京工業大学名誉教授の平井聖先生からは「市松文様のガラスのレリーフ(実物)を持っているよ、見に来るかい?」と連絡をいただき、実際に見に行かせていただきました。
これまで私たちは、お城や寺社などの歴史的建造物の往時の姿をVRで再現する取組みを数多く手がけてきました。そこで向き合うのは博物館や郷土資料館等に集められた江戸時代またはもっと古い時代の文書や図面です。一方、近代建築をテーマとした時には、身近なところにある生きた記憶や新しい記録との出会いがあることに面白さを感じています。
これから再現しようとしている宴会場(ピーコックルーム)についても、当時披露宴を挙げた方や家族の記念写真に、私たちが把握できていない彫刻のデティールが写っているかもしれません。また、ホテルという特別な空間で起こった様々なドラマについて、想い出をお持ちの方々がいらっしゃるかもしれません。
そんな記録や記憶と出会える事を淡く期待しつつ、まずは私たちの活動自体を発信していこうと思い、このWebサイトを立ち上げました。並行してSNSも運用を始めます。少しでも関心を持って楽しんでくださる方々と多く繋がることができればと願っています。
帝国ホテル・ライト館VR再現プロジェクトチーム